オーケストラの楽器たち
指揮者 | |||||||
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コントラバス | チェロ | ヴィオラ | ヴァイオリン2nd | ヴァイオリン1st | |||
ファゴット | オーボエ | フルート | クラリネット | ||||
チューバ | トローンボーン | トランペット | ホルン | ||||
打楽器 | ティンパニー |
チェロ【英:cello/独:Violoncello/伊:violoncello/仏:violoncelle】
🎻 楽器データ 🎻
サイズ | 全長約120センチ |
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チェロの名曲 | サン=サーンス「白鳥」 J.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲」 溝口肇「世界の車窓から」のテーマ ピアソラ「リベルタンゴ」(ウイスキーCMで有名。原曲はバンドネオン) |
チェロを愛した作曲家 | ドヴォルザーク、ボロディン、エルガー、ハイドン、ブラームス、など |
チェロ弾き有名人 | 天皇陛下、高円宮殿下、宮沢賢治、糸川英夫、ヨーヨー・マ、田部井剛(われらがマエストロ!) |
ステージのここにいます! |
オーケストラの楽器を紹介するシリーズ、今回はカッコよさNo.1(!?)のチェロです。
え、チェロのどこがカッコいいかって?
あの堂々とした弾くスタイルといい、大きなケースをかついで歩いているところといい、カッコいいじゃないですか。映画「昼下がりの情事」でオードリー・ヘプバーンがチェロケースを運んでいる姿を見て、「あれを持って颯爽と歩きたい!」とチェロを始めた団員もいるくらいです。
オケの練習に行って、練習室の壁際にチェロのケースがズラーッと並んでいたりすると、「おぉー、オーケストラの練習に来たなぁ」という感じがします。
ということで、今回はまずチェロのケースのお話から始めましょう。
みなさん、ケースは楽器の付属品と思うでしょう。いやいや別売です。
しかもチェロのケースは高い! 給料1か月ぶんもするカーボンファイバーのケースもあります。これは重さが2.98キロ(実測値)と、楽器(実測で3.02キロ)より軽い! 持ち歩くのもラクです。
しかしこの値段、楽器とどっちが高いんだ!?という世界ですね。
もちろん楽器のほうも値段はピンキリです。上をみればもう、我々の手にはもちろん届きませんが、ヴァイオリンで有名なストラディバリウス、チェロにもあります。CMなどでもおなじみの、ヨーヨー・マが弾いています。
ストラディ……とまでいかなくても、こうした古い楽器は、音が安定していて弾きやすいそうです。
そもそもチェロやヴァイオリンなどは、表側がスプルースというドイツの松、サイドや裏側はメイプル(ボスニア地方の楓(かえで))からおもに作られています。これらの木がちょうどいいぐあいに枯れてくるまでに、時間がかかるのです。
これが、古い楽器がもてはやされるゆえんです。
チェロは、楽器の形や大きさからも女性のようで、「恋人を抱くようにあつかって」なんて言われますが、スタイルにも個性があります。
ストラドモデルというのが一般的な型ですが、モンターニャモデルという下半身が太め(幅が広い)の楽器もあるんです。ケースを買うときには注意しないと、「楽器が入らない!」なんてことも。
もちろん音の傾向も違っていて、ストラドは高音に艶があるのが特長、モンターニャは中低音の響きが豊かになります。
チェロと一緒に歩くときも、もちろん恋人と一緒の気分。
雨の日などはついチェロのほうにカサをさしてしまって、自分がずぶぬれになっていたり。ケースにレインコートを着せちゃったりする人もいるとか。
でもトイレに行けないのはちょっと不便なんですよね。まさか置き去りにはできないし、大きいから一緒に連れても入れないし……。
恋人とは言っても、楽器が大きいからやさしく弾くだけでもダメです。
とくに左手の弦を押さえる指には力も必要。同じ調子でヴァイオリンを弾こうとしたら、「握りつぶさないで~~」って言われちゃいます。あつかいが難しいのも、恋人と同じってことですか。
ちゃんと練習してる人は、指がかたくなってきます。で、しばらくサボってひさびさに練習すると、指がなまってて痛かったりして。練習してないのが自分にバレバレです。
さてここで、チェロの楽譜を見てみましょう。下をご覧ください。今日演奏するチャイコフスキーの、2楽章のチェロだけでメロディを弾くカッコいい部分です(2段目から)。
チャイコフスキーの第2楽章より |
ここのところ、五線の左端にヘンな記号がついているでしょう。
そう、これはこの連載の第1回目、ヴィオラのときにもご紹介したハ音記号です。
いつも見ているのはヘ音記号(1段目)ですが、これと「ド」の位置が違うのです。慣れるまでは楽譜を読むのが大変です。ここもメロディだし、緊張するところだそうです。
ところで、ステージでチェロが座っている位置が、オーケストラによって違うことにお気づきですか?
埼フィルでも、今はステージの中のほうに座っていますが、かつては右側の客席に近い席に座っていたこともありました。
中に座るのは、楽器が正面を向いてチェロの音が客席によく届くというのが大きな理由です。
演奏するほうにしてみれば、最前列から最後列までのお互いの位置が近いから、弾きやすいというメリットもあります。お客さんから離れてるから、失敗しても恥ずかしくないっていうのも隠れたメリットです。
それではこのへんで、ここ数年で充実の埼フィルのチェロパートのみなさんに、インタビューしてみましょう。
――チェロを選んだのはなぜですか?
「大学に入って学内を歩いていたら、オケの人につかまって引っ張っていかれて、何でもいいやと思ってたらチェロになっちゃいました」
「私はコントラバスをやりたかったんですが、大学で弦楽アンサンブルに入ったら楽器があまってなくて、チェロならあると言われてそのまま……」
「中学、高校と吹奏楽でホルンを吹いてたんですよ。でも挫折してチェロに転向しました」
「私も初めは趣味でフルートをやってました。でも大学オケでは競争率が高くて……。困っていたらそこにチェロがあったんです」
「僕はクラリネットでしたが、ヴァイオリン弾きの女性と出会って一緒に弦楽器をやろうとチェロを始めました。今の奥さんですけどね」
「ヴァイオリン、ホルン、トランペットもやりましたが、埼フィルに入るとき“足りない楽器は何でもやります”って言ってチェロになったんです」
――いろんな楽器ができる方が多いんですね。ではチェロをやっていて楽しいのは?
「メロディも弾けるし、それを下で支える伴奏も出てくるし、両方できるのが楽しいですね」
「ちゃんと弾けてボディが共鳴したとき、その振動が体に伝わってくるのは気持ちがいいですよ」
「音色も好きだし、音域が広いのはいいですね。音量が大きくて四重奏なんかでは楽しいです」
「チェロをやってよかったのは、チャリティコンサートで亡くなられた高円宮殿下と一緒に弾くという経験ができたことですね」
――アマオケ連盟の総裁もなさっていた方ですよね。うらやましい! では最後に、埼フィルチェロパートを一言で。どんなパートですか?
「の~んびりしていて平和なパートです」
「ホント、うるさい人もいないしおだやかですね」
「人数が足りない時期も長かったので、やっとそろってうれしいです」
「……半ズボンって感じ?」
――ハハ、それはトップの彼の夏の定番でしょ?
「でも、楽器がすべらなくて弾きやすいんで」
「私も家で練習するときはそう! 恥ずかしくて他人には見せられないけど……」
――あらあら。でもチェロを弾いてたらモテたでしょう?
「え、それはないない!」(なぜか一同うなずく)
「力がありそうだね、って言われたことはあるけど……。弱々しく見えないからダメなんですヨ」
へぇ~、そうなんですか。意外だなぁ……。
でも今日はみなさんのこともよく知ってもらったし、勇姿を披露してくださいね!