オーケストラの楽器たち

指揮者
コントラバス チェロ ヴィオラ ヴァイオリン2nd ヴァイオリン1st
ファゴット オーボエ フルート クラリネット
チューバ トローンボーン トランペット ホルン
打楽器 ティンパニー

オーボエ【英:oboe/独:Hoboe/伊:oboe/仏:hautbois】

🎻 楽器データ 🎻

サイズ 全長約70センチ
オーボエの名曲 チャイコフスキー《白鳥の湖》から「情景」「四羽の白鳥の踊り」
「家路」(《新世界》の2楽章より)
など
オーボエを愛した作曲家 ブラームス、チャイコフスキーなど
(※どんな作曲家の曲でも、たいてい“おいしい”)
オーボエ吹き有名人 宮本文昭(CMや朝の連ドラ「あすか」のテーマで有名)
茂木大輔(ユニークな著書やコンサート企画で人気)
池田肇(埼フィルのトレーナーです!)
音域

ステージのここにいます!

オーケストラのコンサートを聴きに行って、いつも必ず一番最初に聞くのは何の楽器の音でしょう?
はい、答えは「オーボエ」。曲を演奏するまえにオーケストラ全員で楽器の音程を合わせるチューニングで、まずオーボエが「A(アー)」(ラ)の音を出して、それにみんなが合わせるからです。
とっても緊張するそうですが、ではなぜ、オーボエがチューニングの基準になると思います? それはオーボエが「チューニングができない」楽器だから。
ステージでのチューニングのシーンをよく見ていてください。弦楽器は弦を張っているネジのようなものをクルクル回して、管楽器は管の一部を抜いたり入れたりして音程を調整しています。でも、オーボエはそれができないんです。なんだかフシギですね。
今回は、ホルンとともにギネスブックで「世界で一番難しい楽器」と認定されているという、オーボエの正体に迫ってみましょう。

オーボエの音を出す原理は、薄く削った葦(あし)を2枚合わせた(正確に言うと1枚を折る)リード=ダブルリードに息を入れて振動させています。
これはチャルメラと同じ……ということは、職に困ったらみんな屋台を曳いてラーメン屋さんに!(ただし味は保証しません)――というのはよくあるジョーク。もともとはトルコあたりの西アジアで生まれた楽器が、西に伝わったものがオーボエに、東に伝わったものがチャルメラになりました。雅楽で使われる篳篥(ひちりき)も仲間です。

リードは、削り方によって音色がずいぶん変わります。
オーボエ奏者は、自分の理想の音色と吹きやすさを求めて自らリードを削ります。市販品もありますが、さらに自分で削って調整したりするのです。
管の抜き入れでチューニングできないので、リードを作るときに長さで音程の調整もします。
それにしてもこのリード、あたりはずれがとても大きい! リードケース(下の写真の(1))にはズラリ、リードが並んでいますが、このなかでも、本番で使えるのは1~2枚しかないそうです。
長時間使い続けられないので、大事なリードはリハーサルでも使わずに本番にとっておくとか。なかなか苦労しているんですね。


これがオーボエ奏者が持っている“七つ道具”

オーボエ奏者はステージに上がるときも大変です。何がって大荷物なんです。
ここでオーボエ奏者だけが持つ“七つ道具”をご紹介しましょう。
まずは前述の(1)リードケース。大事なリードを保管します。
リードを削る(2)ナイフは、楽器屋さんで買う専用品だと5000~6000円もします。
次に(3)チューナー。いくらチューニングでみんなが自分に合わせてくれるからって、めちゃめちゃな音程で吹くわけにはいきません。機械を使って、ちゃんと自分の音程をチェックしているんです。
(4)水入れも必需品。オーボエのリードはかたいので、吹くまえに水につけておかないと音が出ません。
それから(5)鳥の羽根。これ、何に使うと思います? 管の中の水分をとるのです。他の木管楽器は布を使いますが、オーボエは管が細くて布は通りません。なにせ上のほうはストローくらいしかない。そこでこの羽根を管に通して水分をとばして乾かすのです。
より細いリードのなかを掃除する(6)小羽根もあります。
そして最後がキーの水分をとる(7)クリーニングペーパー。水が詰まると音が出なくなってしまうので、本番中でもせっせと掃除したりしてるんですって。はぁ、大変ですね。

オーボエの音は、オーケストラの楽器のなかでもかなり異色。わかりやすく言えば“目立つ音”です。だから、どんな曲にもたいてい1回以上は「おいしい旋律」が登場します。
本日のプログラムでも、《セビリア~》はもちろん、ビゼーの第2楽章には大ソロが、《新世界》でも第2楽章にオーボエの仲間で少し低い音が出るコール・アングレ(イングリッシュ・ホルン)の有名な旋律が出てきますので、よく聴いていてくださいね。


オーボエ(左)とコール・アングレ

さてでは、埼玉フィルのオーボエ奏者たちに話を聞いてみましょう。
おやおや、次回プログラムのパート決めですね。どうやって決めてるんですか?
「基本的に、年齢順!」
――え~っ!? じゃぁ希望が重なったときは?
「年の劫(こう)、老い先が短い人が優先権を持つんです」
「私たちは人生まだ長いし、またいつかやることがあるかもしれないからね」

――はぁ、確かに合理的だけど……。ではみなさんがオーボエを選んだきっかけを教えてください。
「中学のときはホルンだったんですよ。でも上手じゃなかったし、リコーダーが好きだったので、高校に入ってオーボエを希望しました」
「私はフルートがやりたかったんです。でも人気であふれてしまって、『オーボエやって』と言われて、聞いたこともない楽器だったんだけど、しぶしぶ……。ただ、私マイペースだから、吹奏楽では人数が少ないオーボエは合ってたかも」
「私は宮本文昭のタバコのコマーシャルで見てこれだっ!と思って、最初からオーボエ希望でした」
「“音色一本!”。カラヤンに重用されたベルリンフィルのコッホの音色に魅かれて、今でももちろん、目指すはコッホの音です」

――なるほど。ではオーボエの好きなところ、楽しいところと、大変なところも聞かせてください。
「吹きながらいい音だなって思って、合奏のなかでもいつも気持ちいいですよ」
「いつもきれいな旋律が吹けるのは楽しいですね」
「今回の《セビリア~》はむかし先輩が素敵に吹いて憧れてたので、吹けてとっても嬉しいです」
「でも、ソロはプレッシャーも相当だけど……」
「そのぶん、2ndの人(注・外側に座っている)はオケのなかでいちばんヒマと言われるくらい面白くないときも。いなくてもいいかと思うくらい」
「そう、1stと2ndの差がとても大きいですね」
「お金がかかるのが大変。楽器も高いけど、その他の道具が多いので」
「吹いていて大変なのは息が苦しいところ。管が細くて使う息がとても少なく、呼吸を止めているような状態なので、心臓に悪いと言われてます」

――それは大変。難しい楽器だそうで、やさしい楽器なんてないですが、とくにどんなところが?
「小さい音を出すのが、非常に難しい楽器です」
「正確な音程をとるのも苦労しますね」
「指使いがとても複雑で、こっちの指を上げてあっちの指を下げるとか、そのへんも難しいところでは」
「楽器やリードの維持には手間がかかりますね」

――なるほど。では最後に、埼玉フィルのオーボエパートを一言で!
「見ての通りですが、お父さんと3人娘」
「そう、うちのお父さんと同じ年なんです!」

――そうだったんですか。個性的な三人娘を自由にさせながらも、お父さんへのわがままは許さないって感じで、ご紹介したパート決め(実話デス)にはびっくりでしたが、なかなかユニークなオーボエパートでした。
今日の演奏会では、ソロなど聞きどころ満載です。どうぞお楽しみに!