オーケストラの楽器たち

指揮者
コントラバス チェロ ヴィオラ ヴァイオリン2nd ヴァイオリン1st
ファゴット オーボエ フルート クラリネット
チューバ トローンボーン トランペット ホルン
打楽器 ティンパニー

打楽器【英:percussion/独:Schlagzeug/伊:percussione/仏:percussion】

※ティンパニを除く打楽器を取り上げます

🎻 楽器データ 🎻

サイズ ※本日する使用もの
トライアングル・一辺20cmから大太鼓・直径約90cmまで
打楽器の名曲 ラヴェル《ボレロ》、オルフ《カルミナ・ブラーナ》、ストラヴィンスキー《春の祭典》など
打楽器を愛した作曲家 ベルリオーズ、チャイコフスキー、マーラー、R.シュトラウス、バルトーク、バーンスタイン、アンダーソンなど
打楽器たたき有名人: 石原裕次郎、加藤茶、NHK「のど自慢」の鐘のおじさん、河本準一(次長課長)など
音域

ステージのここにいます!

オーケストラの楽器のなかで、最も原始的な楽器――それは打楽器でしょう。たとえば古代人が丸太をたたいて獲物を追い込んでいたりしたら、その丸太は立派な打楽器なわけですから……。
今回はそんな打楽器の世界にご案内しましょう。

打楽器には実にたくさんの種類があります。本日の演奏会で使うものだけでも、小太鼓、大太鼓、タンバリン、トライアングル、シンバル、ドラ、木琴(シロフォン)、鉄琴(グロッケン)……。こんなにいろいろある楽器を、“打楽器”というパートの人は全部演奏するんです。大変ですね。
しかも楽器によって演奏するコツが違います。「音階もないし、たたくだけだから簡単だろ!」ってよく言われますがとんでもない。ためしにたたけばわかりますが、絶対に打楽器の人がやるようにはできないとか。最初の敷居は低いけど、奥は限りなく深いと言えそうですね。
そんな楽器たちを駆け足で紹介してみると……。

まずは小太鼓(スネア・ドラム)。鼓笛隊などでやったことのある方もいるでしょう。
この楽器、「ザッ」という音が特徴ですが、これは裏の皮に20本ほどの「響き線」という細い線がくっつけてあるからなんです。
昔はガット(今風にいえばテニスラケットの打面に張ってあるもの)だったのですが、最近ではスチール製などで、コイル状にゆるく巻いたものがよく使われています。響き線をはずせば「トントン」という音になります。
実はコイル状に巻いていない、ただの針金のようなまっすぐな響き線もあり、今日の演奏では2種類の響き線の楽器を曲によって使い分けています。「トントン」の音も聞けるかも。音の違いも楽しんでみてください。

次に大太鼓。ずいぶん大きいですね。
皮に牛皮が張られたものがとてもいい音がしますが、湿気や熱にすぐ影響されるので調整が大変。ステージでライトにあたっただけで、音が変わっちゃったりするんですって。
そこでプラスチック製やファイバーグラス系の皮がよく使われています。


小太鼓の裏の皮と響き線

タンバリンはカラオケ・ボックスなどにあったりしますが、オーケストラで使うものは木製で、牛などの皮が張ってあります。
そしてジャラジャラいう部分、ここの材質によっても、音の感じが違ったりするんです。今日の演奏で使う楽器は、華やかな音の銅系の材質です。

トライアングルもさわったことがある人は多いですよね。
しかしこれこそ難しい楽器! 敬遠する打楽器奏者も多いんです。なにしろたたいているとクルクル回転したりするし、小さい音や、同じ音色&音量で打ち続けるのは至難の業です。
単純な楽器ですが、いろんなメーカーがいろんなトライアングルを作っていて、大きさや太さもまちまち、三角形の角が丸っこいもの、切れている部分が鉛筆の先のようにとがっているもの、なかにはタテ長の二等辺三角形のトライアングルもあります。
音色もさまざまで、透き通った音、太い音、倍音がたくさん出るもの、暗く深い音……など、奏者の好みや曲によっても使い分けたりします。


大太鼓とトライアングルを比べてみると

ここぞの一発で強烈に炸裂するドラは、実はたいてい裏側に「中國武漢製」というハンコがおしてあるんです。それには深~いワケが……。
おそらく真鍮系の合金製なのですが、この合金の調合具合が、“武漢の地に伝わる秘伝”だというんです。かくしてこの地以外では、すぐれたドラは製造できないんだとか。なんだかヴァイオリンのストラディヴァリウスの秘密のニスみたいな話ですね。
ドラといえば、「渾身の力を込めてたたいたら、スタンドから外れて後ろに落っこちて『ぐわぐわガッシャーン!』」なんていう笑い話をたいていの打楽器奏者が見聞きしていますが、今日は落ちないように、ちゃんと吊るしてくださいね。

さてでは、埼玉フィルの打楽器奏者たちと今回はエキストラさんにも加わってもらって、話を聞いてみましょう。

――何で打楽器を選んだんですか?
「タイコがやりたかった!からですね」
「吹奏楽部に入って、管楽器の人はお腹を鍛えるのに腹筋とかやってたんですよ。それが嫌だったし、打楽器の打つ練習はラクだなぁと思って」
「ぼくは吹奏楽部でタイコに割り振られたから」
「小学生のときにティンパニで遊んでハマったのがきっかけです。中学2年のときにサイトウキネンオーケストラのブラームス1番を見て、“カッコいい!自分がやるのはこれだ”って思いました」
「最初はロックバンドでドラムたたいてたんです。メジャーデビューもして羽振りもよかったんですが、趣味でやるならトシとってもできるクラシックだろう、と思ってね」


打楽器の譜面には音程がありません、しかも休みがいっぱい

――すごいですね。ところでみなさん、ふだんはどうやって練習してるんですか?
「やってない……と書かれちゃマズいので、練習台とメトロノームで練習してます~」
「ふだんは楽譜を見てイメージトレーニングですかね。たまに、スタジオを借りたりもしますが」
「部屋に雑誌を並べて楽器に見立ててたたいたりね」

――なかなか苦労してるんですね。では打楽器をやっていて、どんなところが楽しいですか?
「気分爽快! かな」
「へんな楽器ができるのは楽しいです。嵐の風の音を出すウインドマシーンとか、教会の鐘のような形のカリヨンとか。ネコの泣き声なんていうのもありますね」
「目立つところは必ず“おいしい”こと。みんなが苦労して苦労して盛り上げてくれて、最後の一発でぜ~んぶいただき! みたいな」

――それは気持ちがいいでしょうね。でも、大変なこともありますよね。
「それは楽器運搬!」(全員一致!!)
「大曲だと楽器集め、人集めも大変です」
打楽器の譜面には音程がありません
しかも休みがいっぱい
「出番が少ないので、休みを数えるのが大変。でも数えなくていいときは、寝られるという利点も」

――失敗談なんてありますか?
「寒い練習場だと、寝すぎて寝冷えとか」
「ばちを放り投げるなんて序の口ですね」
「シンバルの持ち手が外れてコロコロ転がったり。曲が盛り上がってて気づかれなかったけど」
「ラヴェルの《ボレロ》で最後、興奮しすぎて、小太鼓が床に落っこちた話もありますね」
「《1812年》という曲で大砲のパートがあるんですが、本物の空砲をホールで使ったら、煙でスプリンクラーが作動して、ホール中が水びたしになって大騒動だったとか。海外の話ですけど」

――うわー。今回はそういうトラブルが起きないように、気をつけてくださいね。
なんだかとっても楽しげな打楽器のメンバーですが、本日は2曲とも大活躍のプログラム。ご期待ください!