オーケストラの楽器たち

指揮者
コントラバス チェロ ヴィオラ ヴァイオリン2nd ヴァイオリン1st
ファゴット オーボエ フルート クラリネット
チューバ トローンボーン トランペット ホルン
打楽器 ティンパニー

クラリネット【英:clarinet/独:Klarinette/伊:clarinetto/仏:clarinette】

🎻 楽器データ 🎻

サイズ 全長約68センチ(B♭管)/約71センチ(A管)
クラリネットの名曲 モーツァルト/クラリネット五重奏曲
ガーシュウィン/「ラプソディー・イン・ブルー」
ラフマニノフ/交響曲第2番の3楽章
クラリネットを愛した作曲家 ウェーバー、モーツァルト、ブラームス、マーラー
クラリネット吹き有名人 ザビーネ・マイヤー(ベルリンフィル最初の女性奏者)
ベニー・グットマン
音域

ステージのここにいます!

オーケストラの楽器を紹介するシリーズ、今回は木管楽器の代表、クラリネットです。

みなさんは、クラリネットと聞いて何を思い浮かべますか?
「♪ぼくの大好きなクラ~リネット……」という歌は、子どもでも知ってる人が多いことでしょう。
歌に登場するクラリネットは音が出なくなっちゃうのですが、一見すると学校で習うたて笛(リコーダー)を豪華にしたようなクラリネット、音を出すのは簡単! と思っていませんか?
いえいえ、実はたて笛とはまったく違う原理で音を出しているのです。

写真を見てください。
マウスピースという楽器を口にくわえる部分に、リードという葦(あし)を薄く削った板がついています。息を入れると、このリードがブルブルふるえて音が出るのです。
リードをふるわせるにはコツがいるので、ただフーッと息を入れただけでは音は出ません。そこが、リコーダーとは違って難しいところなのです。

クラリネットは、吹奏楽の世界ではヴァイオリンのように人数もたくさんいて、メロディーの基本を奏でることが多い花形の楽器。オケのなかでも、素朴な響きで、しかしときに鋭く明るく、また哀愁をもって奏でられる素敵な役まわり(と筆者は思っていた)なのですが、当の奏者たちに聞いてみると、出しゃばりなフルート、オーボエ(ゴメンなさい!と、意外においしいファゴットにはさまれた“ジミな存在”なのだそうです。
座右の銘は「中庸を旨とする」。
でもそれではちょっぴり欲求不満気味とか。たしかに、フルートなら今日演奏する「メヌエット」のような、誰もが知っている有名な曲がありますが、クラリネットにはないかもしれませんね。
しかし、オケのなかでの隠れた名旋律は数えきれません。今日の演奏会でも、そんな名旋律をさがしてみてください。


ここで音を出してます

さて、一口にクラリネットといっても、実は種類がいろいろあります。ふつうのクラリネットのほかに、アルトクラリネット、バスクラリネット、コントラバスクラリネットなどがあるのですが、ふつうのクラリネットにも、管の長さの違いによって、短いほうから、E♭管、D管、C管、B♭管、A管などの種類があります。
これらのクラリネットだけで編成される、“クラリネットオーケストラ”なんていうのもあるんですよ。

管の長さが違うと、もちろん音域が変わりますが、音色も変わってきます。
単純にいうと、管が短いE♭管などはキャンキャンした音になり、長いA管は落ち着いた響きです。
実は今日演奏するマーラーでは、4人の奏者が写真の5種類13本の楽器を吹き分けます。
作曲家は欲しい音色によって管を指定していて、たとえばマーラー1楽章のフルートと掛け合う「カッコウ」の鳴き声のところや、暗い3楽章のなかでいなかの素朴な踊りのところなどは、C管で演奏されます。


左からA管、B♭管、C管、E♭管、上はバスクラリネット

実はマーラーは、そのほかにも楽譜にいろいろと細かい指示がしてあって、たとえば2楽章と4楽章では、下の譜面のようなベルアップなんていうのもあります。
ふつうクラリネットは、楽器を下に向けてくわえるのですが、マーラーはそれを、水平に客席に向けて構えろと書いているのです。
これには、音が直接客席に届くようにというねらいがあるのですが、視覚的効果も大きいでしょう。ぜひ注目してみてください。


これがマーラーの「ベルを高く上げて!」の指示(2楽章)

ところで今日の演奏会、前半の「アルルの女」では、オーケストラでは使われることがめずらしいサキソフォーン(通称サックス)も登場します。
サックスは音を出す原理はクラリネットと同じですが、息を入れれば比較的簡単に音が出ます。しかしそのぶん、美しい音色を出すのが大変で、とくに、どんなに小さな音でも出せるクラリネットとくらべて、小さい音や低音を美しく響かせるのが難しい楽器です。
「アルルの女」には存分に聴かせどころがあるので、こちらにも注目ですね!

さてそれでは、恒例の団員インタビューです。

――クラリネットを始めたきっかけからどうぞ。
「小学校の5年生のときに、入っていた器楽クラブがブラスになったのがきっかけです。でもクラリネットは人気で、出しにくい“シ”の音を出すオーディションがあり、1週間“シ”の音ばっかり練習して合格しました。6年生になって、クラに飽きてサックスにかわったのですが、中学に入ると吹奏楽部でパレードがあり、楽器が重いのが嫌でクラに戻りました。以来、クラ一筋です」
「私は4年生のときに吹奏楽部に入って、マーチングでカッコいい小太鼓をやりたかったんですが、家で練習するとうるさいし、フルートは希望者が多くてじゃんけんだったので、クラリネットにしました。それからずーっとクラリネット。中学以来の仲間とは、今も埼フィルで一緒ですよ」
「そうそう。私は中学で楽器を始めたので、吹けなくてイジメられたよね。その頃の上下関係(!?)は今もそのまま。同じ年なのにー!(笑) でも、上手な人と一緒にやれたので上達できました。私は本当は、弦楽クラブでコントラバスをやりたかったんですけど、手が小さいし姉と一緒なのが嫌で吹奏楽部に入部。希望はとくになかったのですが、あまっていたクラリネットになりました」
「小学校では鼓笛隊、中学ではサックスをやってたんです。クラを始めたのは、地元の子どもオーケストラに入りたかったから。でも大学ではクラがいっぱいでオーボエになり、卒業後はまたクラに舞い戻りました」

――それで「アルルの女」ではサックスも吹いてしまうんですね。ずいぶん目立ってますよ。
「クラとちがって目立てるからいいというか、吹くからには目立たないとね。難しさはさておいて」

――なるほど、楽しみですね。ではクラリネットをやっていて楽しいこと、好きなところは?
「クラリネットオーケストラをやったのは、いま思うととても楽しかったです。公演でウィーンに行ったりとか。クラリネットだけで、バッハとかやっちゃうんですよ」
「溶け込みやすい音なので、いろいろな楽器と室内楽などのアンサンブルを組めて楽しいですね」
「いつも、とってもいい音色だなぁと思いながら吹いています。クラリネット、大好きです」

――では、埼フィルのクラリネットってどんなパート? Mさんは女性3人に囲まれていいですね。
「Mさんと愉快な仲間たち、かなぁ」
「いやいや、女性陣におこられないように、おとなしくしているだけだよ」
「仲良しグループって感じです。遊びだけじゃなくって、演奏のなかでも仲がいいんです」
「合奏中もとっても楽しいですよ」
そうそう、いつも楽しそうに笑顔が絶えない様子を、横から見ていますよ。今日のプログラムは、メンバーたちにとって聴かせどころ、見せどころがたくさん。“中庸”どころではないクラリネットの大活躍を、よ~く見ていてください!